◇諫早干拓地調整池開門 地域内対立懸念
「赤潮被害が出れば、県が起こした人災だ」――。長崎県が諫早湾干拓事業の調整池の北部排水門を開け、淡水を放出した3日午前、同県諫早市の小長井町漁協の約15人が市内の県諫早湾干拓堤防管理事務所に押し掛け、怒りをぶちまけた。一方、周辺の営農者は冠水被害を訴え、県に開門続行を求めた。「漁民をしっかり説得してほしい。地域内の対立が激化しないか心配だ」との声もあがった。
漁民側はこの秋、養殖アサリの約10年ぶりの豊漁を期待している。富栄養化した調整池の水が湾内に一気に流れ込んだため、赤潮発生のおそれが高まり、アサリの死滅につながると主張する。しかも今は干満差が最少の時期で湾内の潮の流れは少ない。
県によると、土地の低い干拓営農地や背後に広がる農地の冠水を防ぐために、調整池の水位を堤防外の海面より1メートル低く保っている。ところが、6月29日から断続的に降り続く大雨で、調整池の水位は30日からマイナス20センチ台にまで上昇していた。背後地の土地改良区の要望を受けて開門に踏み切ったという。
県が北部排水門を開けるには、漁協との「事前協議」の紳士協定がある。県は、組合長と30日夜から連絡が取れなかったとして、独自の判断で北側の四つの門を開けた。
開門を知った漁民側は「冠水被害から農業を守って開門したが、これで漁業に被害が出れば県による人災になる。補償してくれるのか」「背後地の冠水は、排水ポンプが未整備なせいだ」と県幹部を問い詰めた。県側が「(被害が出たとしても)排水との因果関係が特定できないので補償はできない」と突っぱねたため、漁民は集結して県庁に乗り込むことも検討している。
◇「開門が遅い」営農者ら抗議
一方、背後地や干拓地の営農者ら約20人は3日、県庁を訪れ、「ずっと開門を求めてきたのに、なぜ遅れたのか」「排水を続けなければ、ほとんどの農地が水没する」などと訴えた。中村法道副知事は「予想以上に雨量が多く、判断が十分ではなかったかもしれない。4日も開門する」と応じた。
諫早干拓土地改良区の高橋徳男理事長によると、先週から降り続いた雨で約280ヘクタールの水田のうち3分の1が冠水しているという。高橋理事長は「漁協には強行的な人もいる。県が弱腰になってまた開門をためらわないか」と懸念する。
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